10月16日(月)10:00~11:30、豊田哲也 ジェトロ・ボゴタ事務所長による講演会、“ペトロ政権発足1年:最新の政治・経済状況”を、当協会会員を対象にオンラインで開催しました。
2022年8月、コロンビア史上初の左派政権となったグスタボ・ペトロ元ボゴタ市長・上院議員が大統領に就任して1年余が経過、豊田所長から「新政権の動向」と「経済動向」について詳細な解説が行われました。概要は以下の通り。
【新政権の動向】優先的な国家の政策である「和平」について、新政府は旧FARCとの2016和平合意の履行に加え、ELN並びにそれ以外の4違法武装組織(旧FARC離脱グループ、旧パラミリタリー残党等)とも対話を通じての「完全な平和(Paz Total)」の実現を目指していること(4武装組織とは2023年1月1日から、ELNとは同8月3日から180日間の一時停戦継続中)、また「平等と社会正義のための税制改革」ではオカンポ蔵相の改革法案が成立し、法人税は据え置く一方、原油、石炭部門、水力発電部門への上乗せ課税を導入、外国企業の配当金に対する源泉徴収税率は20%へ倍増、富裕層へは実質的な増税を実現。更に「エネルギー・環境関連」では、環境保全に配慮した新エネルギー政策導入を標榜しているが、風力、太陽光など新エネルギー関連プロジェクトが一部地域住民の反対や地方政庁の許認可遅延で頓挫が相次いでいる等困難に直面しているとの説明がありました。
【経済動向】2022年通年のGDP成長率(実質)は7.5%。特筆すべきは対コロンビア外国直接投資FDI(フロー)が金融・石油・鉱山・商業などを中心に前年比82%増の173億9,300万ドルで過去最高額となったこと。2023年は当初インフレ上昇や新政策の不透明感が不安要素となり民間消費が低迷、投資も第2四半期に前年同期比マイナス24.0%と大きく落ち込んだが、消費は2023年後半に入り上向いており、FDIも上半期は増勢を維持していること、国債格付けではドゥケ政権下同様ペトロ政権下でもMoody‘sが投資適格のBaa2(Stable)、FitchとS&PがBB+(Stable)を据え置いている等の説明がありました。
政権の評価に関しては、ペトロ大統領や閣僚による突発的な意見表明、閣僚間の見解の相違など不透明感を助長することが多発し、本年8月世論調査では支持が33%、不支持が61%となっていること、今後注視すべき点として、地方選挙(10月29日)、抗議活動の多発(燃料、治安問題)、エネルギー関連における政府の明確な意思表示等をあげられました。